日本の畑の悲劇①

健康茶研究コラム

近代農業とは;

日本の高度成長期においては急増する食料需要に対応するために、日本中の農家は農薬や肥料を大量に使うようになりました。いわゆる近代農業です。国策として1950年を契機にこの生産方法がとられています。国策であり生産性も向上し経済的に効率が良いので農家は素直に従いそのおかげで日本は(日本人は)発展したということになり、それは60年経った今でも続いています。

農作物の品質とは

質より量の農業は作物の品質低下を招くことになりました。姿カタチが良いものが高く売れます。規格に合うものしか買ってもらえません。流通の関係上カタチを均一化(規格化)したという話を聞きました。農作物の取引における品質に良し悪しは見た目です。品質とはその作物も出来の良さ(栄養成分とか味とか)と思っていましたが、そういう曖昧な(数値化し難い)ことは近代農業では二の次(というよりもスルー)です。スーパーなど小売りの段階でもやはり見た目が重視されます。消費者も見た目を気にします。勿論姿カタチが良くおいしいほうを求めますが、見た目でしか判断できないので仕方がないのかもしれません。どうせ食べるまでおいしいかどうかはわかりませんから。

近代農業以降に産まれた私たちは、野菜の本当の味を知らないと言われます。おいしさを数値化しようと、旨味=グルタミン酸ナトリウムに代表されるアミノ酸特有の味自体をおいしさの基準としたり、糖度を示したりもしていますが、それが質の良いものなのか、おいしいものなかの判断にはなりません。

お茶畑の現実

お茶(茶畑)でも同じことが起こっています。高度成長期における需要の高まりに対応するために、日本中の茶畑は窒素肥料を大量に使うようになりました。それをきっけにお茶の品質は激変しました。

お茶の生産方法の変化は農林水産省発行の資料を見るとわかります。
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/nenyu_koutou/n_kento/pdf/3siryo4.pdf

特に健康茶ラボが注目したのが、6ページの「茶園地における窒素過剰施肥の影響と対策」という項目です。明治から昭和の初期にかけて肥料は年間10kg/10aでしたが、1940年代後半以降肥料の施肥量が急速に増加を始め、1950年代には120kg/10aに達しました。つまり、昭和初期の12倍の使用量。長年投入され窒素肥料は土壌劣化と水質汚染をもたらしています。薬漬けです。もう薬はやめられないほどに。

お茶の味の変化

当然味も変わります。野生または自然栽培の低肥料で作られたお茶の味は、それそれの種類特有のあっさりした味とコクのある後味そして透き通るような香りがありますが、大量の窒素肥料で育てられたお茶の味は、アミノ酸特有の香りと旨味でまったり感のある飲みやすく満足感の高い味へと変化を遂げています。

それに準じてお茶の品質基準が激変します。お茶に含まれるテアニンというアミノ酸が品質の基準になったのです。テアニンの発見は1950年のことです。近代農業で作られた茶葉にはテアニンが大量に蓄積されるようになり、1950年以降、テアニンが日本茶の高品質の証と言われるようになりました。それに呼応して消費者のおいしいも変わります。ペットボトルで売られているお茶の味が今のお茶のデファクトスタンダードです。それらは健康に良い・健康茶として販売され、沢山の人に飲まれています。

海外の茶畑

現在日本人はアミノ酸のコクのある味と香りがするものが好まれているので、高級茶と呼ばれるお茶の多くは大量の窒素肥料で育てたものを使います。一方、海外では高品質のお茶栽培に窒素肥料は使われません。それは中国でも台湾でもインドでもです。どんなに大規模農家でも大規模工場でも日本のように肥料を使うことはありません。しかし、中~低品質のお茶を生産する場合は日本と同じく大量の窒素肥料が用いられます。それらの殆どは日本への輸出用です。海外では、高級なお茶は窒素肥料で成長を加速するのではなく、自然に近い状態でゆっくりと栽培することが重要視されています。品質は姿カタチではなく、アミノ酸でもありません。

やめられない近代農業

無論、日本の農作物が全てダメで海外のもののほうが安全な訳ではありません。日本でも昔から近代農業に抵抗して無農薬・無肥料(または低農薬・低肥料)で栽培する農家の方も少なからずいらっしゃいます。近年では新規就農者も無農薬を目指す人も増えています。味の好みはそれぞれですが、出来るだけ農薬や肥料(特に化学肥料)を使いわない方が安全で健康的であること、そして土壌(地球)にも優しいことは明解です。しかし今日本でそれを目指すのは厳しいのが現実です。ドーピングされ続けた土壌との格闘はとても大変ですし、品質の基準が変わらなければ、未だビジネス的には「古い近代農業」でやらざる負えないでしょう。やればやるだけ土壌は疲弊しもっとドーピングが必要なのに、です。もしかしたら画期的な肥料や種子、農業技法など、科学的に解決できるのかもしれませんが、少なくとも今、60年前の国が決めた基準の悲劇的な現状に気づき、疑問を持つ人がもっと増えてほしいものです。(つづく)